息子は晴れ男。
一緒に旅すると雨に降られることはまずありません。
息子とのアメリカツーリングは
モーテルとキャンプを繰り返しながら
どこへ、どこまで行くかは風まかせ…
今回も、そんな気ままな旅になりました。
バイクでの旅に、
”the観光地” は似合わないと感じることがあります。
観光客が多く、
時には、「バイクと写真を撮らせて」とか、
中には、「バイクにまたがらせて」と
言われることさえあります。
なので、「来たよ!」の証拠を残して
本当によければまたくればいい!
というか、
むしろ、観光地までの道程にこそ
バイクで走る魅力があるように思います。

「厚くてやわらかい樹皮が音を吸収して静けさを作り出すのかもしれない。セコイアの木々からは静寂と畏怖が伝わってくる。時の流れを超越し、我々の思考を超越しているようなものだ。」

スタインベックが『チャーリーとの旅』で
そう書いていたセコイア国立公園をみて
そのままヨセミテ国立公園を廻り

州道120号を西へSonoraに向かい
モーテルを確保してから
(このあたりは「充電させてくれませんか」の出川さんと同じですが)
地元のダイナーで夕飯をとります。

走りながら気になっていたことがありました。
西に向かう道が州道49号線といい、
その先にはなんとエルドラドという街があるというのです。
西へ向かう「49」と名付けられた道の先に黄金郷エルドラド。
それだけで、浪漫が膨らみます。

「明日はエルドラドまで行ってみようか?」
調べてみると
州道49号線は、別名:Golden Chain Highwayと言われ
カリフォルニア・ゴールドラッシュの年号 “Forty-Niners”
を使い「金が見つかった場所同士を“後から”つないだ道」
なんだそうです。
一攫千金を夢見た人々と同じ浪漫をまとって
走り出しましたが…
そっけないほど、普通の田舎道。
しかも、ヨセミテを下れば下るほど
日差しの強さを感じるようになりました。

49号線を走った思い出に標識と写真を撮って
エルドラドの街に入るか…というところで
エンジンが止まりました。
セルを回しても、きゅきゅきゅきゅきゅん
かかりません。
400kg近いバイクを息子と汗だくで押して
Your friendly local market と看板に書かれた
グローサリーストアーに助けを求めます。

店主のBobbyは、親身になって対応してくれました。
一番近いハーレーディーラーに電話をし
バイクの症状も、自分に代わって説明してくれました。
2時間ぐらいでバイクを取りにこれるというので…
それまでどこかいい時間を過ごす場所はないか、と相談すると
間髪をいれず、Bobbyは言いました。
“This is it!”
シンプルな一言。
当時流行っていた、
マイケルジャクソンの映画のタイトルと同じで…
カッコよくて、泣きそうになりました。

Bobbyは、店の奥の椅子に案内してくれました。
彼の人柄を物語るかのように
地元の小学校の生徒から
Bobbyに贈られた感謝状が貼られていました。
息子と商品のサンドイッチ、コーラをほおばると
トラブルをひとまず回避できたことへの安堵感に満たされました。

外に出て、エルドラドという街を歩くと
伝説の黄金郷を探して人が集まり
一時は栄え、金が尽きると静かになった
“黄金郷という言葉だけが残った街”のようにも思えましたが、
その時の自分は、
ゴールドを掘り当てたような気分でした。

レスキューの人たちが来て、
バイクをトラックに載せ
ディーラーに向かいました。

49号線から離れるにつれ、
道は整い、カーブは緩やかになり、
視界が少しずつ開けていきます。
山にしがみつくように残っていた小さな街の気配が薄れ、
代わりに「今のアメリカ」の匂いが強くなってきます。

そして、Folsomのディーラー到着です。
幸い、点火系のトラブルですぐに直せるということなので
さっそく、Tシャツを物色していると
囚人がハーレーにまたがる絵柄のものがありました。
Folsomには有名な刑務所がありますが、
ゴールドラッシュの熱が去ったあと、
その“影”を引き受けるために必要とされたからなのか?
そんなことが頭に浮かびました。
人間の欲望と、その行き着く先を静かに結ぶ道を
温かな人のぬくもりを感じて巡る、
そんなツーリング+レッカー移動の旅となりました。

こんな一日だったからなのか、
ディーラーで教わったモーテルを確保し、

夜はHootersという、
自分たちらしくもない選択をしていました。
囚人がハーレーにまたがり、
“breaking out” と書かれたTシャツが、
この日の結末を、
妙に正確に言い当てていたようにも思えました。



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