『お・も・て・な・し』と聞けば
日本人特有のものだと思っているかもしれませんが、
アメリカにもおもてなし文化はあります。
今日はそんなお話をしたいと思います。

モニュメントバレーがどんよりした空模様だったので
モーテルに戻り、なにげなく窓の外を見ると
空に色が付き始めていました。

夕陽を追いかけて走りたくなって
再びバイクにまたがります。

茶褐色の大地にはバイクと自分の影が映りだされています。
西の空に残っていたオレンジ色が、
じわりと冷えるように色を失い、
いつの間にか赤から紫に雲に溶け込んでいきました。
ここナバホの大地では、
夕日は沈むというより、
岩肌に吸い込まれていくようでした。
エンジンを切ると、
たちまち暗黙の世界に飲み込まれていきました。

翌日、アーチーズ国立公園に向かいます。
走り出すと容赦なく夏の太陽が照り付けてきました。
「東に向かって左に曲がる」と地図で調べてきたのですが、
まだ交差点まできていないのか、
通り過ぎてしまったのか
ようやく見つけたガソリンスタンでもう一度確認します。

そこにBMWの大型バイクにナビを付けて
ソロツーリングをしていたLarueに声をかられます。
「アーチーズ国立公園に行きたいんだけど…」と話すと
「一緒に行こう」と誘ってくれました。
ナビ付のバイクは違います。
迷うことなくアーチーズ国立公園に到着
一緒に自然の創った岩の芸術を見てまわります。
ルイジアナに住んでいるというLarueは
いたるところでジェントルマンでした。
込み合う駐車場で、率先して、車の誘導をするのです。
1人旅ではあまりできない記念写真も撮ってくれました。
アーチの日陰になるところに座ってLarueに尋ねてみました。
“Southern hospitality?”
“a kind of”
Larueは、そう笑って答えました。
明日はどうするんだ?と聞いてくれたので、
「グランドティートンに行きたい」というと、
「オレはこのモーテルに宿泊するから、一緒に行きたければ、朝、会おう」
そう言って電話番語が書かれた紙をくれたので、
翌朝、Larueのホテルに行き、
二人でグランドティートンを目指すことになりました。

ナビが示したのは
Moab Arches national parkから
191号線でインターステイト70号へ
そこからDouglas Pass Road(CO-139)に乗って
地図上まっすぐ北へ向かうコースです。

Douglas Pass Roadは、
先住民、牧畜民、鉱山関係者など
谷に生きる人たちが、山の向こうへ行くために使った道、
ロッキー山脈の支脈を越える峠道でした。

高原、断崖、谷へと、風景が劇的に変わり
ガードレールが少なく、空と大地がむき出しで
トラックも少なく、音が消える瞬間を感じます。

ルート66のような賑やかさも、
ロードサイドカルチャーも、ほぼありません。
車のためだけに残された、
静かな西部を楽しむことのできる道でした。

赤い断崖が連なる大峡谷と、
その底をせき止めて生まれた巨大な貯水湖Flaming Gorgeは
川が何百万年もかけて “削ってきた道” のようにも見えました。

「グランドティートンに行きたい」と言ったのは自分ですし
そのためには、先を急がなくてはならないのはわかりますが
もっと、止まって写真撮らせて~と
心の中で叫んで気づきました。

Larueはグランドティートンへそもそも行きたかったのだろうか?

走っている時間そのものが記憶になる道でした。



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