選択肢が奪われる時代の自由 − Milwaukee, WI

“Netflix to buy Warner Bros. Discovery in $83 billion deal, cable networks including CNN to be spun off”

125日付のワシントン・ポストに、こんな見出しが踊っていました。

高校英語で言えば、

Netflix is set to buy Warner Bros. Discovery in an $83 billion deal, while cable networks including CNN are to be spun off.

ということです。
 新聞の見出しでは「be動詞・助動詞・完了形の(has/have)が消える」が大原則。
 “決定・合意・予定で訳す場合が多く、be to不定詞・be set to / be expected to
と考えて訳すとうまくいきます。
和訳してみます。
Netflix830億ドルの取引でワーナー・ブラザース・ディスカバリーを買収することで合意している、一方、CNNを含むケーブルネットワークは切り離されることになっている。」

ちゃんと「〜することが決まった」「〜する予定だ」が使われているのがわかります。

 慶應大学文学部で出題されたTim Wu氏による”The Tyranny of Convenience(2018)”でのこんな一文
Convenience has the ability to make other options unthinkable. Once you have used a washing machine, laundering clothes by hand seems irrational, even if it might be cheaper. After you have experienced streaming television, waiting to see a show at a prescribed hour seems silly, even a little undignified.

「利便性は、他の選択肢を考えられないものにしてしまう力を持っている。いったん洗濯機を使ってしまえば、たとえ手洗いの方が安上がりだとしても、衣類を手で洗うことは非合理的に思えてくる。同様に、ストリーミングでテレビ番組を視聴することを経験してしまうと、決められた時間まで待って番組を見るという行為は、ばかばかしく、さらには少し品位に欠けるものにさえ感じられる。」

ネットフリックスがCNNをいらないと吐き出したということは、
Tim氏の見立て以上のことが起こっていて、
ネットでよく見る井川意高さんなどの解説を見ると、
「マスゴミの終焉」、なるほど…そういう見方もあるのかと気づかされます。

振り返ってみると

高校では「三ない運動」がありました。
「持たない・乗らない・乗せない」
これは
高校生がオートバイを持たない
自分で乗らない
他人のバイクにも乗せてもらわない
というものです。

高校の現場で、なんの疑いもなくそう指導してきました。が
今思うと、「バイク=危ない=不良」というレッテルを貼っていたのでは…
と気づきます。

アメリカにそのような「不良」のイメージがバイクにないわけではありませんが
40歳ごろに「自分の人生はこれで良かったのか?」と思う
Midlife crisisと呼ばれる文化がります。
これは、人生の折り返し地点(おおよそ4050代)にさしかかったときに感じやすい、
自己評価や人生の意味への深い揺らぎのことです。

「残りの人生をどう生きるべきか?」

「若ささけでなく、可能性を失いつつあるのではないか?」

「本当にやりたかったことは何だったのか?」

仕事・家庭・健康などが一通り安定する一方で、
“これから増えるもの”より“失われていくもの”が意識されるため、
心理的な不安定さが生まれます。

「人生はまだ続くが、無限ではない」と初めて本気で実感することです。

その結果、
急に高級車やバイクを買ったり
転職・独立・離婚など大きな決断をしたり
若い頃の夢を追い直そうとするのです。

ただ、Midlife crisis は決してネガティブな季節ではなく
人生を再設計するチャンスでもあります。
価値観を見直す
他人基準から自分基準へ移行する
「成功」より「納得」を重視する
その結果として、後半の人生がより安定し、満足度が高くなる人も多いのです。

ホームステイ先だったアリゾナの友人も
急に、夫婦でバイクに乗り出しました。
アメリカにはsoccer momという言葉があります。
サッカーの練習や試合に車で送り迎えする母親のことで
郊外の中産階級の母親像を指します。
サッカーママが終わると
カスタムHarleyに乗りだす女性も多いのです。 

便利さが選択肢を奪い、
常識が価値観を固定してしまう時代に、
何を「危ない」と決め、
何を「不良」と名付けるのか。
それを問い直すこと自体が、
いまの私たちに残された自由なのかもしれません。

Harley-Davidson 110周年記念ラリーに参加するため、
ミルウォーキーを訪れました。
ディーラーでは、
ウィスコンシン大学バッジャーズと
コラボしたHarley Teeを、
地元の人たちが誇らしげに着ていました。

AARP」と大きくプリントされたTシャツもありました。

これは、
American Association of Retired Persons ……
中高年向け団体として知られるその略称を、
Aged Adults Riding Proud と言い換えた洒落です。
「いい歳だけど、胸を張って走ってる」
「年を重ねた大人の、誇りあるライド」
「若さじゃない。覚悟で走ってる」
そう意味でしょうが…これは着られないなと思い、買いませんでした。

それでも、年齢を重ねたライダーたちが
それを当たり前のように楽しんでいる姿から、
Harley Tee という文化の厚みを感じることはできました。

 

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この記事を書いた人

“An English teacher’s insight × Harley and American culture × a life shared around sweets. What I’m doing on this website is not decluttering, but a redesign for the next ten years.”

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